「休日の過ごし方で、人生の質は変わります。
休日の朝を二度寝で潰してしまうのか。
それともジョギングや読書、瞑想などで有意義に過ごすのか……
どちらを選ぶかで、自分の人生の質は決まります」
なんとなく開いたSNSの画面に、こんな文字が並ぶ。
あぁ、なんてうるさいんだ。
大きなお世話だって思いながら、スマホの画面と目を同時に閉じる。
土曜日の朝くらいゆっくり寝たって、人生の質は変わらないと思う。
9時ごろになってようやく体が目覚め始める。
ベッドから降りて、重たい頭のバランスをとるように、ゆらゆらと歩いて1階に降りる。
今日は年に1回のストロベリームーンという日らしい。
満月の前後は、身体がむくんだり、イライラもやもやしたりする。あんまり体調はよくないなぁと思いつつも、窓の外の天気のよさがプレッシャーをかけてくる。
「あっちゃん。草むしりしてくるね」
次男にそう声をかけて外に出ると、次男もついてきた。ふたりで黙々と草をむしる。特にしゃべることもなく、それぞれ熱中する。
ちょっと寂しく感じたので、スピーカーで音楽を鳴らすことにした。外仕事に最適なBluegrass。ただの庭仕事が、まるでライ麦畑に感じてくるのである。
草をむしっていると、向こうから柔道着を着た男の子が歩いてくる。近所の、ペルーと日本のハーフの男の子だ。
「何してるんですか?」
「草取りしてるの」
「へぇ。休日はいつもこうやって過ごしてるんですか?」
「う、うんまぁ……」
「なんかいいですね。じゃあ、汗だくなんで帰ります」
どっちが子どもなんだかわからない会話をして、別れた。
そういわれると、なんだかとってもいい休日を過ごしているような気になってくる。あの子はなんて、いい子なんだろう。
いい気分に浸りながら、昼は冷たいざる蕎麦を茹でて食べた。
昼ご飯を食べ終わったら、少し遠くの大きな公園にでも行って子どもたちを思い切り遊ばせたい。後回しにしていた掃除もしておこう。夕ご飯は少し手が込むけど、酢飯を打って細巻きと稲荷寿司でもしようか。
休日の過ごし方で人生の質が変わるって、さっきはうるさいなって思ってしまってごめんなさい。確かにそれも一理あると思う。
昼ご飯のざる蕎麦を食べて、ちょっとだけ横になりながらそんなことをうつらうつらと考えていた。
目が覚めたら、もう夕方の4時だ。
なんてことだろう。
やっぱり、私の人生はそんなに大した人生にはなりそうもない。
休日の過ごし方で、人生の質は決まっちゃうんだもの。だから私には、このくらいがちょうどよい。